電波ソングをおおざっぱに分類して、それらに影響を与えた音楽ジャンルを洗い出そう!という記事。
こっちの記事も読むといいかも → この曲は電波ソング!じゃない!? | 今私は小さな魚だけれど
この記事を書くきっかけになったのがサエキけんぞうさんの記事と元たまの石川浩司さんのライブ。
まずはサエキけんぞうさんの記事の話から。
続いて、明日グラドル佐山彩香さんがアキバで販売させていただく月刊サイゾー最新号4月号の内容について。アキバというところで申し上げますと、ミュージシャン・サエキけんぞうさんにご執筆いただいた記事「ももクロでメジャー化した「電波系」音楽は IT時代が生んだ日本初のパンクだった!?」
— サイゾー (@cyzo) March 19, 2013
ネット上で無料でも一部読めます。
ももクロでメジャー化した「電波系」音楽はIT時代が生んだ日本発のパンクだった!? - サイゾーpremium
話の要旨をまとめると、こんな感じでしょうか。
『電波ソングには、4拍すべてにリズムが打ち込まれることで、速いテンポ感がある。
その音楽性を前山田健一さんが受け継ぎ、ももいろクローバーによってメジャーの世界に。』
面白い話なのですが、電波ソングの中でも速いテンポ感があることは必須ではないと思います。
こういうこともおっしゃってますが、
電波ソングには、ロックや黒人音楽的なニュアンスをまったく感じない。ほとんどアクセントを持たないリズム波形を分析すれば明らか。なにげに日本が生んだ、日本人による新しい音楽文化といえるのだ。
ロックやポップソングの曲調のまま、歌詞やセリフによる過激さを表現しているものもあります。
(せめてどの曲の波形なのか書いて欲しいところなのですが…)
例えば新堂真弓さんの"カゲキ愛情☆問題カンジョウ?"。
それはさておき、一番気になったのが「電波系の起源」として挙げられていた細江慎治さん。
クールな印象だったテクノに、人懐っこいメロディーを導入した、という感じで書かれてました。
というものがございます。電波系の音楽を、カルチャー論的な方向からというよりも、音楽論的な方向から分析したものでございます。ゲームミュージックの作曲家・細江慎治氏を「電波系の元祖」とし、以後の流れを解説してみせるサエキ氏のテキストおよそ3000字、ぜひともご購読のほどを!
— サイゾー (@cyzo) March 19, 2013
電波ソング的には声優の民安ともえさんとの共作テクノライダーが有名?
TECHUNORIDER TAMMY テクノライダータミー 公式サイト
アルバムを聞いてても、たしかに人懐っこさを感じる楽曲ばかりでした。
(本当はゲーム音楽も聞きたかったのですが、アテにしてたCDショップで見つからずそのままです…)
ただ、彼の音楽もサエキさんのいう「電波系」の速いテンポ感は無いと思うんですよね…。
話がややこしくなってきたので、先にどんな音楽が電波ソングと呼ばれるかについてまとめます。
あるアイドルファンのブログ記事がわかりやすかったので引用させていただきます。
概ねこんな系統がニコ動などで電波ソング認定受けやすいですよん。
- いわゆるキュンキュン系
- アップテンポで早口な楽曲
- 歌詞がエッチだったり突拍子もなかったりするケース
- 空耳ソング
- (演者または観衆の)パフォーマンスが怪しく楽しいケース
- 普段はクールな曲を多く歌っているアーティストが、カワイイ系の曲を歌うケース
...とまあこんな感じで。アニソンもあるとは思いますが、主戦場は美少女ゲーム系になると思います。
サエキさんの言う「電波系」は特に2番に対応すると思われ、電波ソングの中の(代表的な)一部であることが分かります。
これを参考にしながら、電波ソングの各要素の起源について迫ってみようと思います。
ただし、あまり情報が出てこない同人・アングラな音楽もあるので、勘違いや見当違いも多そう。
これから聞いてみたい!こういうところを調べてみたい!という話ばかりかもしれません。
それについてはこれから探っていったり、教えてもらったりできたら嬉しいです。
※「電波歌」という言葉なら、伊集院光さんのラジオ番組発祥のよう(?)なのですが。
伊集院光 深夜の馬鹿力 伊集院本人やリスナーが作詞した珍奇な替え歌が『電波歌』と呼ばれ、コーナーで多用される。1996年の「輝け!紅白電波歌合戦」など
美少女ゲーム主題歌
電波ソングというジャンルは、アダルトゲーム主題歌を中心に成長してきました。
その中でも、電波ソングの代表曲KOTOKOさんの"さくらんぼキッス ~爆発だも~ん~"。
「1. いわゆるキュンキュン系」での代表格だといえます。
Colorful Kiss - OP / カラフルキッス ~12コの胸キュン!~
この曲が出た2003年は、他にもヤバイ曲が多く、「電波ソングの最盛期」という人もいます。
ただし、この曲が収録されているSHORT CIRCUITの帯には
「さぁ、このサウンドに電波(デジ)れ!」と書かれており、
電波ソングの起源を探るにはもっと遡る必要があることが分かります。
そこで参考になるのがこのサイト。
Adult Game Vocal Collection - BANDiTの隠れ家
アダルトゲーム主題歌について1996年以前から現在(2013年)までまとめられています。
その中から、それっぽいタイトルを選んでみます。
例えば1993年のきゃんきゃんバニーエクストラとか。
(そもそもこんな時代からアニメ絵のアダルトゲームがあったことに驚きです)
この曲が電波ソング的だといえるのか、後の世代の曲に影響を与えているのかは分かりません。
もっとくわしく聞いてみたいですが、そもそも音源が見つからなくてヤバいです…。
他に特記すべきは、桃井はるこさんと小池雅也さんのユニットUNDER 17。
(合いの手やHな歌詞などの露骨な表現はなく)印象的なフレーズと声を武器にしている感じでした。
ちなみに本人たちは電波ソングではなく萌えソングを名乗っていたようです。
Under17 - 天罰! エンジェルラビィ☆~ですver.~
悪ふざけの音楽(音MADなど?)
ハッキリ言って関連はよく分かりません。
ただ、元たまの石川浩司さんのライブを見て、(特に初期の)電波ソングに近いものを感じました。
ちょっと演技調のステージだったり、悪ふざけなのか本気なのかわからない感じとか。
ナゴムレコードとは (ナゴムレコードとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
この辺も余裕があればいろいろと聞いてみたいです。
【ニコニコ動画】たま with 突然段ボール おなかパンパン/月ろけっと
特にぱんださんようちえんあたりはこの辺の音楽の影響を受けてるんじゃないでしょうか?
よく考えると、キュンキュンしてないし、特にアップテンポでないし、エッチでもない…。
studioCampanella blog 「ぱんださんようちえん」DL販売開始
あと、もっとヘンテコな電波ソングはこっちの記事にまとめています。
【今週のまとめ】驚異のアヴァンギャルド・電波ソングの世界 | 今私は小さな魚だけれど
最近の電波ソング作品の中で、似た雰囲気を感じるのはミニロボベータ!というアルバム。
友達のいないロボットがテーマで、ちょっと不吉で、どこまで本気かわからないような空気があります。
ラストの曲で猫鍋のパロディーもやってますしね。
MilliRobo.beta 1stミニアルバム『ミニロボベータ!』: モル園
ほかに悪ふざけしまくってるのといえば"メイドさんロックンロール"。
これは「3. 歌詞がエッチだったり突拍子もなかったりするケース」です。
初出は1997年のPCゲームMAID iN HEAVEN~愛という名の欲望~のおまけCDだそうです。
メイドさんロックンロールってカラオケ配信されないんですかね?
バーチャルネットアイドル・ちゆ12歳「ちゆニュース - 歌関連」
【Dance×Mixer】メイドさんロックンロール(フルVer)【巨乳メイド】
あとは音MADなども影響与えてるのかもしれません。
ただし、こちらは本当に個人が勝手にやってるものばかりなので、ちゃんとまとめるのは無理そうです。
君の脳みそ溶かしつくして~電波ソングとループの甘いワナ - たまごまごごはん
アイドルポップ
「1. いわゆるキュンキュン系」についての話です。
合いの手(ハイハイ!など)は元々ハロプロのアイドルの由来っぽいです。
(ってこのハロプロファンのブログに書いてました)
例えばこの曲。
三人祭 - チュッ!夏パ~ティ (Chu! Natsu Party)
あべにゅうぷろじぇくとには色濃く影響が感じられます。
「Let's go fever time」などの男の声での合いの手(?)も、↑の曲と似た雰囲気を出しています。
アップテンポで早口な楽曲
おそらくサエキけんぞうさんの電波系のイメージに近い、「4. アップテンポで早口な楽曲」。
その原型(?)はおそらく柏木るざりんさん作曲の"巫女みこナース"だと思います。
曲の後半の「まだまだ行くよ~」の後の早口言葉のような歌が始まりだと思います(違うかもしれません)。
この曲も「電波ソング黄金期」2003年の楽曲です。
これをIOSYSが東方アレンジなどで広げた感じ。
(とりあえず有名な魔理沙が~を貼ったけどそんなに早口でもなかったような…)
柏木るざりんさんの2009年の作品"だっこしてぎゅっ! ?汝、隣の枕(よめ)を愛せ"。
この曲では早口パートの他に、「キュンキュン」「ハイハイ」などの合いの手も導入されています。
タクティクス*ラテ だっこしてぎゅっ! ~オレの嫁は抱き枕~
このように、1~6のジャンルが完全に独立しておらず、互いに影響していることが分かります。
ピコピコサウンドの原型について
ボーカル以外はハードコアテクノやテクノポップなどを基調とするものが多いように思います。
電波ソング = ピコピコサウンド みたいなイメージを持っている人も多いでしょう。
PCの性能が上がり(Windows XP以降?)、個人でもDTMが簡単に作れるようになったことも要因?
それで印象に残ってるのがこのツイート。
サエキさんの記事にも出ている同人サークルおでんぱ☆スタジオのベイビー・レモネードさんの発言。
ハイポジってもりばやしさんのですよね?同感です。ハイポジの「性善説」あたり個人的な電波のルーツです。 @tamochi_ikamzz: 電波ソングって、ハイポジをさらにキッツくした感じやと、ぼくは思う。
— ベイビー・レモネード (@BB_Lemon) November 11, 2011
電波ソング的ともいえそうなピコピコサウンドが印象的です。
(そういえばポケットに恋をつめてが1曲目"性善説"っぽいのは気のせい?)
ただし、テクノポップとかニューウェーブはよく知らないので今後いろいろ聞いていきたいです。
小池雅也さんもUNDER 17 → ULTRA-PRISMでかなりピコピコ感が増大しています。
最初期の電波ソングは、既存のジャンル(ロックなど)に印象的な歌を載せていて、
だんだん音楽ジャンルとしてのイメージが固まってきたのかもしれません。
ここで忘れてはいけないのがMOSAIC.WAVで、
活動開始時は「シンプルな音=良い」と言われていたのを、あえて音を詰め込んだサウンドにした
みたいなことをベスト盤AKIBA-POP √ RECOLLECTIONのブックレットに書いてました。
【ニコニコ動画】MagicalHacker ☆ くるくるリスク
あったあった、1stアルバム"We Love~AKIBA-POP~!!"の解説がそうです。
それから、当時の流行の音楽に逆らって天の邪鬼な要素をふんだんに入れました。みんなかっこいい音楽ばっかり目指してる、だから恥ずかしい音楽をやろう。アレンジャーから見たら、無駄な音符がたくさん入ってるのはダメな音楽だ。しかしそれに反するように無数に音が重ねられて無数に音色が選べる今の音楽技術と、この情報過多な時代を表現するため、素人だから許される、ダメな音楽をあえてやろう。
ピコピコした電子音の普及(?)にはMOSAIC.WAVの音楽が一役買ったのかもしれません。
最後に
さくらんぼキッスや巫女みこナースが発表された黄金時代から10年。
この記事をまとめていて、たった10年前のことでも調べるのにすごく骨が折れました。
意外に起源とか由来とか、ちゃんと調べている人がほとんどいないんですね。
例えばさらに10年後、こういう音楽に興味をもつ人が現れるとして、
本当にメジャーな有名なものしか残ってなかったら寂しいと思うんです。
また、あまりに個性的なジャンルとして扱われる電波ソングも、
元をたどればいろいろな音楽と繋がっていて、踏み出せば少し違う世界が見えるかもしれません。
そうすればちょっとだけ楽しくなるかも?
また、知識不足でまとめられてない部分が多くあります。
例えば上に挙げた曲にはアニメで使われた電波ソングは入っていません。
ギャラクシーエンジェルとか畑亜貴さんとか神前暁さんとか。
不足してる/間違ってる部分は、それが本当に好きな方がまとめていただきたいです…。