今私は小さな魚だけれど

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【翻訳】英語版WikipediaのDenpa songの項目を日本語訳してみた

英語版Wikipediaの「電波ソング」の項目がやたら充実してるので、それを翻訳すれば何かが見えてくるんじゃないかという記事です。

Denpa song - Wikipedia, the free encyclopedia

海外の編集者ならではの冷静な視点で書かれており、電波ソングという言葉の成り立ちや音楽としての特徴が端的にまとまっている素晴らしい記事です。編集履歴によると、この記事を最初に編集したのは6ヶ国語話者のオーストラリア生まれの中国国籍のBenlisquareさんという方です。東方が好きなようですね。

また、参考画像がぺこるさん&ひなうささんの同人CD『Honey planet』だったり、参考楽曲が"だっこしてぎゅ!"と"ハンマーを電波ソングにしてみた"だったり、妙にマニアックなチョイスが光っています。

ところで、日本語版Wikipediaの「電波ソング」の項目の標題がなぜか「萌えソング」に変わっていました。

萌えソング - Wikipedia

音楽の記事なのに「多くはアップテンポの長調、伴奏にはテクノ系の音が好まれる。掛け声や合いの手が多用されるのも特徴で、それらは意味不明なオノマトペであることもある。」くらいしか楽曲の特徴が書かれていないのはちょっとアレな気がします。他の音楽ジャンルとの比較や、どういう文化の中で扱われてるかみたいな話は充実していますが、そもそもどんな音楽なのかという肝心要の部分がよくわかりません。その点でいえば、英語版のシンプルで端正な記事のほうが優れていると思います。

ただ日本語版がダメなわけではなく、参考文献や歴史などはかなり気合が入ってます。1989年のアイドル八犬伝の『君はホエホエ娘』やちゆ12歳が『行殺・新選組』の主題歌を扱ったことまで扱われています。参考文献にある井手口彰典さんの『欲望するコミュニティ──萌えソング試論』という論文は非常に気になります。

そもそも、共同体活動の発起となった『煮込み味噌ナスに激しくワラタ奴等のガイドライン』は 笑える曲を併記したもので、回を重ねる内に萌えソング・電波ソングに特化していくようになった経緯があり、それを反映して電波ソング大賞は初年の2003年のみ"萌え電波系"と"リアル電波系"として分けているものの、後者は萌えから特撮物、滑稽歌まで何でもありで、その区別も翌年からなくなっている。笑える電波ソングを集めるガイドラインも一見同様の区別があるものの、明確に萌えの特徴の方が強くないものをすべて後者に配したに過ぎず、中身は萌え・燃えなど何でもありになっている。

↑これなんて、わざわざインターネットアーカイブからリンクを拾ってくるほどの気合の入りようです。

でもやっぱり最大の問題は今現在「電波ソング」に比べて「萌えソング」という言葉を使ってる人がほとんどいないことじゃないんでしょうか…。

電波ソング」という言葉自体がわるふざけのようなものなので、アーティスト自身が嫌うこともあり、Wikipediaでもこれまでに編集合戦など紆余曲折があったようです。また、音楽としてある程度共通項はあるものの、電波ソングは音楽のジャンルではなく音楽の扱われ方だ、というような意見も多くあります。その辺の事情のせいで電波ソングは何なのかという根本の部分がややこしくなっている気がします。

そこで、海外の冷静な視点で書かれた英語版Wikipediaを読めば、その凝り固まった部分が少しはほぐれるんじゃないかと思います。難しく考えるのも楽しいですが、違う視点からだと今まで見えなかったものが見えてくるのではないでしょうか?

前置きがめちゃくちゃ長くなりましたが、ここから英語版Wikipediaの「電波ソング」の項目の日本語訳です。ただし、私自身が英文に強くなく、誤訳珍訳が多いかもしれません。できれば原文と照らしあわせて、Google翻訳よりマシだという気持ちで読んでください。また、明らかなミスがあった場合は教えてもらえると嬉しいです。



Denpa song

電波ソングは、意図的に変で簡単に頭に残る日本の音楽の一種である。電波ソングの一般的な特徴として、意図的にキーを外したボーカルや、意味をなさない歌詞、やりすぎな楽曲が含まれる。電波音楽は日本のサブカルチャーの中で発展し、オタクカルチャーの重要な側面を整形しており、多くの同人サークルや音楽アーティストが電波音楽に打ち込んでいる。電波それ自体ははっきりとしたジャンルではなく、むしろ様々な種類の音楽を包括的して説明する用語である。

近年はAkiba-POPA-popが電波音楽の別名として作られた。

(#訳注:Akiba-popMOSAIC.WAVが主張するジャンルで、2004年に『We Love “AKIBA-POP”!!』という楽曲があるので近年(in recent times)という表現はひっかかります。)

目次

  • 1 起源(Origins)
  • 2 特徴(Characteristics)
  • 3 サブカルチャー(Subculture)
  • 4 電波音楽に関連する注目すべきアーティスト(Notable artists associated with denpa music)
  • 5 出典(References) ※飛ばしています
  • 6 関連項目(See also)

起源(Origins)

電波ソングという言葉は奇妙で変な音楽を指す俗語(slang term)である。"電波"という言葉は、元々はよく夢想にふけり自分自身の夢想の中に生きる変人を指す言葉として1990年代に生まれ、1981年の深川通り魔殺人事件に由来している。この事件の犯人、川俣軍司は通り魔をする際に違法な薬物を使用しており、二人の主婦と二人の幼児を殺害し、数多くの人に怪我を負わせた。法廷で彼は、電波が人を殺すように命令したと証言し、心神喪失であることを訴えた。1990年代の初め、"電波"という言葉が音楽や文学作品の随所に見られるようになった。それは妄想に取りつかれ、気味の悪い人々や気の触れた狂人を指す婉曲的な蔑称であり、それはその種の人々は電波(electromagnetic waves)を利用しているかのようにテレバシーを通して声を聞き、物を見、コミュニケーションできるという考えに基いていた。当時のそのような使われ方として、日本のメタルバンドKING-SHOW(筋肉少女帯)が殺人事件を参考にした楽曲を挙げることができる。

(#訳注:この辺りの話はDenpa Song English Guideという海外のサイトを参考にしたもののようです)

音楽に注目すると、この言葉はネガティブなニュアンスを含んでおり、気味の悪い、もしくは"ラリっている"と見なされる音楽と関連付けられており、それは―しばしばオタク由来の―奇妙で気味の悪さを持つ歌詞だった。オタクはよく他人と違うようにふるまう変人だと見なされるため、denpaは日本や秋葉原のシーンでのオタクカルチャーに広く結び付けられるようになった。いずれ、"電波"という言葉は、電波(electromagnetic waves)を受信して洗脳されコントロールされているかのように奇妙で現実と調子の外れているあらゆる人を含むようになった。時間が経つにつれて、電波ソングという音楽の分類が形をなし始め、そのような音楽はオタクサークルの間でメインストリームから離れたニッチな趣味やライフスタイルとして盛んになっていった。

特徴(Characteristics)

電波ソングは、その音楽がリスナーを"洗脳"し、彼らは歌の奇妙さによって支配される、という理由付けの下で、極めてやっかい(awkward)でヘンテコだがどうしても惹きつけられてしまう歌詞とメロディーを備えた楽曲で成り立っているとされる。その歌によって毒されて洗脳される感覚はdoku-denpa(毒電波)と表現される。電波ソングは時折意味のない歌詞やオタクに関係するテーマの歌詞が含まれる。頭のおかしい一般的なテーマは、妄想やテレパシーや狂気に関係のあるものが取り入れられており、そして時折そのような歌はcreepiness(不快な感覚?)するくらい支離滅裂ないし反復的な歌詞である。音楽の用語としては、電波ソングはしばしば反復的なchant(詠唱・唱和)やキャッチーなメロディーに並行したキーの外れた歌い方などの特徴が見られ、意図的に"度を超えた"ないし"過剰な"感覚をもたらす。甲高いボーカル、オタ芸の応援(wotagei cheers)、そしてその他の極端な手法によって、電波を特徴付けるわけの分からなさ(chaos)を獲得する。そのような楽曲の一例がNeko Mimi Modeであり、これは"ネコミミモード"というフレーズが歌詞として何度も繰り返される歌である。電波音楽は様々な他の音楽サブジャンル―例えばgamewave(#訳注:chiptuneやbitpopを指す別語だそうです)やbitpopchiptune―と結びついている場合もある。

(#訳注:wotagei cheersってカッコイイですね!最近ニンジャスレイヤーにハマってるのでオタゲイ・チアーズって書きそうになりました。)

電波ソングはよく誤ってキュートでハッピーな音楽として特徴づけられる。これは数多くの電波音楽が極度にハッピーでキュート、そしてたまにペースの早い思い切った萌えをテーマにしているためだが、ずっと暗いテーマも含むこともあるため、いつでも当てはまるわけではない。"キュートなJ-POP"の一形態であると誤解されることがあるが、電波音楽は概してアンダーグラウンドな流行であり、J-POPとは全く異なったシーンであるためそのラベル付けは不正確である。電波という言葉は、最初期は主に気味の悪い音楽と結び付けられていたが、そのほとんどがメインストリームの間から冷ややかな目で見られ、ニッチなオタクグループに限定されて生き残った。UNDER17はキュートな音楽と奇妙な歌詞の歌を作る有名なバンドで、これらの楽曲が電波音楽の外的な感じ方を様変わりさせた。

(#訳注:この辺は人によって違った印象を持つのではないでしょうか?私はオタク層以外の「電波」な音楽も残っている気がします。)

サブカルチャー(Subculture)

電波ソングのアルバムはたびたびアーティストによってコミケットのようなイベントや、他のオタクカルチャー好きの人々の集まりで販売される。電波音楽はたびたびTVアニメシリーズのオープニングやエンディング楽曲として使用される。例えば侵略!イカ娘キルミーベイベーのオープニングテーマなどがそれに含まれる。

電波音楽に関連する注目すべきアーティスト(Notable artists associated with denpa music)

(#訳注:編集者の趣味が思いっきり入ってる気がします。)

関連項目(See also)

翻訳元:Denpa song - Wikipedia, the free encyclopedia