今私は小さな魚だけれど

ちょっぴり非日常な音楽を紹介するブログです

【雑記】「どんな音楽が流行ってるか」より「誰がどんな楽しみ方をしてるか」のほうが大事な気がする

音楽には、国によって、ジャンルによって、そして個人によって様々な楽しみ方があります。

同じ音楽が好きな人でも、その曲のどこが好きなのか、聞くのが好きな人や演奏してコピーするのが好きな人、ドラマやアニメの主題歌として好きな人や純粋に曲が好きな人、踊るのが好きな人、静かに聞いて頷くのが好きな人、みんなと聞いて話し合うのが好きな人、独りで聞いて反芻するのが好きな人などいろいろいます。

ある人はカワイくて「高まる」曲が好きだと言っていて、私も同じ曲が好きなのですが、そういうテンションがピッピーって上がる感覚はあまり持ってません。代わりにこんな感じです。

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単純にキモチイイ感じじゃなくて、気味の悪い、ヘンテコな感覚もある…ような気もします。自分の中に、悪夢的、笑える、ナンセンスなものを好きな気持ちもあり、なんかいろいろと矛盾している気もしてるんですが、別に悩むようなことじゃないので悩んでません。

あんまり関係ない話をしますが、民族音楽学者の小泉文夫さんの本に「西洋の踊りは足のステップで、中東では胴体で、日本や東アジアでは腕や手先で感情を表現することが多い」というようなことが書いてありました。アイドルやアニソンのライブでよく見られるオタ芸も、腕の動きで感情(?)を表現しているのでなるほどな、と思いました。欧米のおたくはいつかオタ芸に足のステップを追加して進化させてほしいです。

音楽オタクの2013ベストアルバムの集計より

ネットの音楽オタクが選んだ2013年の日本のアルバム」という企画をやってらっしゃる人がいました。ブログやTwitter上の音楽ファンが、2013年ベストアルバムトップ10などとして発表しているものを集計したそうです。

しかし、私はこれをどうも味気ない気がしてしまいました。面白い企画で、実際有用だとは思うのですが、「森を見て木を見ず」な感じがしてしまいます。

例えば12位にランクインしているマキシマム ザ ホルモンの『予襲復讐』というアルバムは、どんな人がどんな聞き方をしているのかとても気になるのですが、ランキングではそれは分かりません。なかなか同意してくれる人がいないのですが、私はホルモンは激しいバンドというより、バランス感覚に優れたバンドというイメージがあります。

予襲復讐 マキシマム ザ ホルモン

単なるラウドなバンドはいくらでもいますが、ところどころポップなメロディーやシンガロングなどを混ぜており、それでいてしつこくなく…と言い始めると料理評論家みたいになるのでやめます。

常緑樹と落葉樹

ところで、音楽が好きな人の中でも、クラシックや芸術音楽が好きな人は、「時代や流行に左右されない価値観」を大切にしている気がします。暗黙のうちに、理想のものを追い求めている感じ。

それに対して、音楽には真逆の価値観もあります。CAPSULEとしての活動のほか、Perfumeきゃりーぱみゅぱみゅのプロデューサーとして知られる中田ヤスタカさんは「5分の曲って5分でできる」と言い、その時代の空気を大事にしているようです。

自分の最新の興味こそが彼にとって重要であり、事前に立ち上げたコンセプトなど意味は無い。異常な速度で変化を要求し続けるクラブミュージックシーンのように、数週間の間に趣向が動けば、数週間前に自分がOKを出した曲でも、少しでも「ずれた」と感じればボツになる。クラブミュージックとは対極の、オーセンティックでエヴァーグリーンな音楽を好む人達には、理解されがたい考え方だろう。

ヤスタカさんのようなスタイルは極端にしても、人によって音楽の感じ方が違うのは当たり前ではあります。例えば青春時代に聞いた曲は、楽曲そのものの良さとは別に、その人にとって特別な「意味」を持ちます。

歴史は一度きり

私自身について言うと、今の音楽の聞き方の根っこになってる部分は「民族音楽」で、それぞれの地域の人がそれぞれの聞き方楽しみ方踊り方をしていて、それぞれ良くて面白いという考え方で育ってきました。

ところで、私は最近「統計学」とか「データサイエンス」とかいわれる分野を勉強し(ようとし)ています。それでまあいろいろな読み物を見ているのですが、銀座で働くデータサイエンティストのブログという有名なサイトで紹介されていたこの本に面白いことが書いてありました。

ビッグデータの使い方・活かし方―マーケティングにおける活用事例ビッグデータの使い方・活かし方―マーケティングにおける活用事例
(2014/01)
朝野 煕彦

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それがエスノグラフィー(民族誌)という手法です。…「ビッグデータ」というタイトルを付けておきながら、莫大なデータを活用する以外の方法を紹介しているあたり、かなりロックだと思います。

第7章 ビジネス・エスノグラフィーによるインサイト

調査パネルを少数にしぼる代わりに、網羅的に消費行動を調査することでターゲット層の細かな消費者心理を追求する、エスノグラフィーというアプローチについて概観した章です。

もちろん目的によって違うとは思いますが、「他の人の考え方を知りたい」とか「自分がより良く生きよう」と考えた時、参考になるのは全体ではなく個人個人の考え方だと思います。

私個人的な考え方ですが、統計的なデータを見るだけでは、どうしても自分自身の「常識」や主観が入ってしまう気がします。例えば女性が男性向けの美少女ゲームをしている場合、私は今までカワイイものが好きな子がジブ○ールのOPに惹かれて(騙されて)来たんだな、と納得していたのですが、どうも完全に陵辱系が好きな人がいるようなんですね。

Makai Tenshi Djibril - OP / 魔界天使ジブリール

どんなにデータ集めても、恋(?)の法則はわからないんだなあと思いました。多分そういう自分の発想にない場合、対象を注意深く観察したり、直接本人に聞いてみたりするのが早い気がします。それが美少女ゲームの場合、セクハラってレベルじゃないので実際ムリなんですが。

ある程度法則性はあるにしても、多くの人の平均値をとる考え方は、数値化の時点でかなり多くの大事なものを捨象してしまっている気がします。男女別について集計すると、トランスジェンダーみたいな人の生活は見えなくなってしまいますし。(データ解析の手法はそれだけではありませんが)

音楽や考え方の違いは争いを生む

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※特に何も考えずにこの章を貼り付けました

音楽ファンの「聞き方」や「考え方」にフォーカスできたら面白そう

最近こんな本を読んでいます。私自身はほとんどプログラマではないのですが、「プログラマとして仕事をする上での心得」みたいなものも書かれていて非常に面白い本でした。

プログラマが知るべき97のことプログラマが知るべき97のこと
(2010/12/18)
和田 卓人、 他

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数多くのプロフェッショナルなプログラマが1~2ページのエッセイを書いている方式で、「誰にとっての利便性か」や「言語だけでなく文化も学ぶ」など、プログラミング以外の「仕事の進め方」としても刺激を受けるテーマがゴロゴロしています。

同じように、同じ音楽が好きな人にインタビューしたり文章を持ち合ったりして、その人の「音楽の楽しみ方」に焦点を当てるような紹介の方法はないものかと考えています。

他人の「音楽の楽しみ方」…もっと大げさに「生き方」は、人によって意外に違っているし、それでいいと思います。単に「良い音楽」の情報をするだけでなく、楽しみ方や思想を集めたものが作れれば、リスナーとしてだけではなく、様々な場所でインスピレーションがわくものが作れるはずです。

ですが、具体的に何をすればいいのかは今はサッパリ思いつきません。とりあえず、自分と他人が違ってると認識した上で、それでも「書きたがり」「言いたがり」なチャーミングなブロガーさんが増えるのを祈ってます。