今私は小さな魚だけれど

ちょっぴり非日常な音楽を紹介するブログです

【雑記】「アレ以外の何か」としての電波ソング with 社会シミュレーション

伺かの記事ではありませんので悪しからず。

最近、卒業研究のほうが忙しくて音楽をあまり聞けていません。社会の合意形成のダイナミクスを統計力学っぽくやってる感じです。その関係で、社会科学にも詳しい方とお話する機会があり、レヴィ=ストロースっていう人類学者の婚姻関係の研究や、彼の影響を受けた「構造主義」っていう思想(哲学の分野)を教えていただきました。

構造主義 - Wikipedia

研究対象の構造を抽出する作業を行うためには、その構造を構成する要素を探り出さなければならない。構造とはその要素間の関係性を示すものである。それは構造を理解するために必要十分な要素であり、構造の変化を探るためには構造の変化に伴って変化してしまうような要素であってはならない。

一般的には、研究対象を構成要素に分解して、その要素間の関係を整理統合することでその対象を理解しようとする点に特徴がある。例えば、言語を研究する際、構造主義では特定の言語、例えば日本語だけに注目するのではなく、英語、フランス語など他言語との共通点を探り出していくメタ的なアプローチをとり、さらに、数学、社会学、心理学、人類学など他の対象との構造の共通性、非共通性などを論じる。

複雑系や数理社会学みたいな分野でよく用いられる「ややこしい問題をネットワーク(グラフ理論)に置き換えてその上で動くシンプルなモデルとして説明しよう」というアプローチに近い発想を感じます。さらに突き詰めて、「西洋的な哲学や数学もひとつの構造であって、未開(と呼ばれる)部族のもつ世界観にも構造があり、同じだけの価値がある」みたいな、価値観を相対化するような発想もあるっぽいです。

はじめての構造主義 (講談社現代新書)はじめての構造主義 (講談社現代新書)
(2014/02/21)
橋爪大三郎

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↑詳しくはこの本読んでください。面白いです。

また、機械学習というかパターン認識をやってる人からすると、この「構造」は脳のニューラルネットワーク(的な何か)が得たパターンに対応してるような気がします。脳が学習して認識するパターンが、「構造」として人間の前に見出される…という感じでしょうか。

ここから先は音楽ジャンルの話です。

音楽ジャンルというのは、最初は「既存のジャンルでは分類できないもの」を荒っぽくひとまとめにして名付けられることが多いように思います。例えばニューウェイヴなんて「パンク以降の新しい波」って意味だし、プログレッシブ・ロックは「(クラシックや民謡などの影響を受けた)先進的なロック」、もっと卑近な例だと「電波ソング」なんて「頭のおかしい歌」って意味から始まったはずです。

電波ソングの定義を教えて下さい。 - Yahoo!知恵袋

後、同じく番組にゲストに出てた畑亜貴さんは電波ソングについて

「ジャンル分けできないソング」

と述べてました

ただし、これらの「ジャンル分けできない(できなかった)音楽」の中から、人間の優れたパターン認識能力を使って「パターン(ミーム?)」を取り出し、それに基づいて新しい音楽を作っていくという複雑な現象が起こっているように思います。

自然科学の範囲なら「自然から人間が勝手に構造(パターン)を見出す」だけで良いのですが、社会科学や人文学の分野では「社会や芸術から人間が勝手に構造(パターン)を見出し、それに基づいて新しい製品や作品を制作する」というフィードバックがあります。

MOSAIC.WAVIOSYS以降、彼らの影響を受けて電波ソングというジャンルが「音を詰め込んだ」「高速な」ものにエスカレートしていったように思います。

かめりあさんの作る電波ソングはこういう意味での電波ソングの最右翼だと思っています。10年後くらいに電波ソングの歴史の教科書が出版されるとしたら「MOSAIC.WAVIOSYS以降エスカレート(中略)かめりあ氏の手によってジャンルとしての"電波ソング"は完成したのだ…」みたいに書かれるでしょう。

>>かめりあ feat. ななひら [HD] 「ませまてぃっく♥ま+ま=まじっく! {Clean Rip}」

以前、「電波ソングは死んでいない」と主張する記事を書きましたが、音楽ジャンルとしてタグ付けされたものであって、「アレ以外の何か」としての電波ソングは衰退してしまったのかもしれません。

と思ったのですが、いつの時代も変なことを考える奴はいるものです。それらは私達から見出され、パターンを見出され、関連付けられるのを待っているのかもしれないし、別に待ってないのかもしれない…。(よくわからない締め方)

それまで33.turboでも聞いて待っていましょう。

>>電波de若大将

もう一つ、「音楽ジャンルの発展」を説明する社会シミュレーション(エージェント・ベース・モデル)として、「作品」のパラメータを「エージェント」がパターン認識するプロセスと、「エージェント」がそのパターン認識の結果を基に「作品」を制作するプロセスの相互作用で説明するものが作れないかなーと思っています。「芸術分野の発展の数理的な知見(難しそう)」がないとシミュレーションしても意味のある結果かどうか分からないとは思いますが…。