今私は小さな魚だけれど

ちょっぴり非日常な音楽を紹介するブログです

【雑記】ニッポン大電波ソング時代:「オバQ音頭」から始まるキャラクター音楽のかたち

以前、電波ソングに連なる日本のキャラクターソングの歴史を調べていて、その中で1960年代に発売された『オバQ音頭』に興味を持ちました。この時代に歌詞の中にキャラクターの特徴も取り入れていて、キャラクターソングとしてのフォーマットを確立していてヤバいです。

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そう思っていた間、偶然『ニッポン大音頭時代』という本を見つけ、その中で『オバQ音頭』にも触れられていたので読んでみました。また、今度8月に開かれる『電波ソング老人会 vol.3』で必要な曲も掘れるかなと(宣伝)。

「音頭」という、身近でとらえどころのなく、低く見られがちな音楽ジャンルの話なのですが、電波ソングにも共通するような記述も多く、とても面白く読めました。今回の記事は「電波ソングファン」から見たこの本の感想を記述していきます。

本の概要についてはこちらの書評をお読みください。

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冗談音楽としての音頭と電波ソング

特に印象的だったのが「第五章 冗談音楽として新展開を迎える音頭」です。元々は雑多なジャンルだった音頭が、『東京音頭』等でフォーマットが確立した後、パロディー化されている過程を描いた章です。

ここまで見てきたように、『東京音頭』の段階から音頭の定義はひどく曖昧だったが、音頭がネタ化され、パロディーの対象になったことによってさらに曖昧なものになってしまった。だが、見方を変えると、コミック音頭の文脈において、音楽的様式に囚われない自由奔放でハチャメチャな音楽表現が次々に登場したとも言える。

これは2003年の『巫女みこナース』以降、2chのスレ(「笑える電波ソングを集めるガイドライン」等)を通して元々「既存ジャンル(特にアダルトゲーム)の中にあるトンチキな曲を読んでいた名前」が狙って作られるようになり、パロディー化、再生産化していった歴史と共通しているように思えます。ちなみに「狙って作られた電波ソング」は『お兄ちゃんどいて!そいつ殺せない!』が最初だと詳しい方に聞いたことあります。

あと全然関係ないんですが、「DAパンツ!」の『パンツ音頭』という曲が、さすがに音頭のフォーマット関係なさすぎて悩んでいます。

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なお、『パロディと日本文化』においてツベタナ・クリステワは、「パロディが成り立つには、共通の約束事に基づいた基準、生活様式、テクスト、価値観などが必要である」としたうえで、パロディーの目的を「他の芸術作品を揶揄や風刺、批判する」という対立的なものだけではなく、並列や対比的な目的も含まれるとしている。

電波ソングの文脈に置き換えても、これにも同感です。この本読んでみようと思います。

パロディと日本文化

パロディと日本文化

また、最近のでんぱ組.incブランディングを見ていると、秋葉原的な電波ソング的なものの他に、原宿文化や、過去のオタク(ゲーム?)文化への郷愁を感じることがあり、既に「電波ソング」的な要素が引用される側の立場に回っていることがわかります。そういえば元々もふくさん(ちゃん)の話で「電波ソングモータウン化する」みたいなコンセプトがあるって言ってたような気がするんですが見つけられませんでした。

完全に余談ですが、海外出身の方だと、これらの文化に元々壁が無く、まとめて「日本のポップカルチャー」として扱っていたような気がします。ある意味、そういう周辺部(?)の方のほうを見ると先の時代が予見できるのかもしれません。

また、この後の「日本の冗談音楽の系譜」の話も面白いです。この中でクレージーキャッツの『スーダラ節』が絶賛されているのですが、たしかに「次々にリズムパターンが変わ」る複雑な楽曲構成で、そのくせ歌は素っ頓狂で変態感あります。

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ここからもうもっと音楽を掘れそうですね。

アニソン音頭とキャラソンの元祖

その次は『第六章 変わりゆく地域共同体とアニソン音頭』という、元々私が読みたかった章です。

〈みなさんこんにちは。僕、オバケのQ太郎だよ。今度ね、僕の『オバQ音頭』ができたんだ。Qちゃんと一緒に歌って踊ってくださいね〉というQ太郎の呼びかけ(このフレーズはヴァージョンによって異なる)から始まり、〈キュキュキュのキュ(アソレ!)〉という子供ならずとも口真似したくなるキャッチーな囃子言葉が挿入されたこの音頭は、日本で最初のアニソン音頭でありながら、早くもアニソン音頭のフォーマットを完成させている。つまり、テレビ・アニメで繰り返し放映されてきたキャラクターの決め台詞や特徴的な口調を随所に忍び込ませること、それを囃子言葉と結びつけること(この点においては、かつて中山晋平が苦心して囃子言葉を編み出したノウハウが受け継がれているとも言える)、そして子供たちがつい合わせて手を叩きたくなるような〈ドドンガドン〉のリズム。こうした要素は「オバQ音頭」以降、アニソン音頭の基本フォーマットとして時に受け継がれ、時に批評的に換骨奪胎されながら転用されていく。

また、私はアニメのキャラクターソングの元祖がそもそも「オバQ音頭」なんじゃないかと考えており、電波ソング自体の出自もキャラクターソングから強い影響を受けていると考えています。

そうすると、「(゚∀゚)ノキュンキュン! 」「ヽ(゚∀゚)ハイハイ!」という電波ソングでお馴染みの合いの手も、無意識に音頭のフォーマットから影響を受けているんじゃないか…というのはちょっと考えすぎでしょうか?

あとは『アラレちゃん音頭』や、パタリロ!の少女漫画の内輪ネタがナンセンスな歌詞になってしまった『クックロビン音頭』などにも触れられています。

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また、具体的に楽曲を調べていきたい方は、アニソン音頭を全部まとめた激ヤバ記事が2013年にあるのでそちらを読みましょう。

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アイドル歌謡の中の音頭

第七章 アイドル音頭によって多様化する音頭』です。アイドル自体の歴史やご当地アイドルブームの話に詳しくないのであまり深く話せません…。

YMOの休止時期に細野晴臣さんが手がけた、柏原芳恵さんの『しあわせ音頭』が気になりました。沖縄民謡と新作民謡のフォーマットを自然に結合させた傑作だと紹介されています。

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また、つんく♂さんが独立した節で紹介されていて、やはり影響力のある人なんだなと思いました。特にライムスター宇多丸さんも絶賛しているという『ダンシング!夏祭り』は激ヤバですね。

和太鼓を模したリズムから始まり、ハイテンションな和風ダンス・ポップへと展開していくこの曲には、さまざまな祭りの記号がふんだんに散りばめられている。〈えらいやっちゃ、えらいやっちゃ〉(阿波おどり)や〈ラッセーララッセッラー〉(青森ねぶた)といった既存の囃子言葉の引用。ハッピ姿のメンバー。執拗に繰り返される〈わっしょい〉というかけ言葉。祭りの風景を描写した歌詞。

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モーニング娘と、AKB48の後にそれぞれご当地アイドルのブームもあって、多くのアイドル音頭が生まれたそうです。また、でんぱ組の『サクラあっぱれーしょん』に触れられて嬉しくなりました。

また、SUPER☆GiRLSの「アッハッハ!〜超絶爆笑音頭〜」やでんぱ組.inc「サクラあっぱれーしょん」のように、音頭にまつわるイメージをリミックス/エディットして転用することによって、アイドル歌謡の新たな可能性を切り開いた例もある。

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海外の音頭と和モノDJ

日系人のコミュニティでも独自の音頭が普及しているようです。インドネシア語と日本語の混成歌詞で、レゲエの要素も意識されたという『ジャカルタ音頭』が気になりました。たまに聞き取れないジャカルタ語が入るのが癖になりそうですね。

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あとDJフクタケさんの「初めて音頭のみで行ったDJプレイの音源」はおそらくこちらですね。後で聞いてみます。

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最後に

「音頭の歴史」に触れるだけで、アニソン以外でも、思っていた以上に考える種や、調べなきゃいけないことが出てきました。それでは皆さん、トルティア音頭で踊りましょう。

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また、今度8月に開かれる『電波ソング老人会 vol.3』にも来てください!(せっかくなので宣伝)