電波ソングイベント『電波人!-dempanchu☆- 3』が来る7/11に開催されます。皆さん、ぜひいらっしゃってください。
このイベントでは、できる限りきれいにVJを行うため、事前にセットリストを共有することになっており、私は毎回割とカッチリとテーマを決めてやっています。「DJはその場で選曲すべき」という意見もありそうですが、普段手を出しづらいジャンルを調査して決められるので、定期的にこういうイベントのために準備することは、自分の選曲のマンネリ化を防ぐ効果もあると思っています。
DJの選曲はエンジニアリングにおける設計と同じで、「求められている制約条件を満たしつつ、何らかの目的(テーマ)を最大限に表現できるように最適な曲の組み合わせを選択する」という最適化問題であると言えます。その際にどうしても知識不足で「表現したいこと」まで到達できなかったり、目的に合っているが他の組み合わせのほうがより表現できるものが出てきてしまいます。そういう選択肢は迷いなく捨て、本当に最適な組み合わせで実装しなくてはなりません。
選択・決定はなぜ大事なのか。それは、「設計における思考の基本課程」ではどの段階も、つねに選択・決定という動作が関わっているからである。「選択・決定のない設計は、設計ではない」と言っても過言ではないのである。
(中略)
もっとも簡潔に言えば、選択・決定とは、次に何があるか、次は何にするかの要素がいくつかあるとき、各要素の重要度や可能性に応じて割り振った蓋然性を判断材料にして、1つの要素だけを選び出し、実行するという動作である。
制約条件やテーマについて
私のモチベーションは、いろいろな人に「こんなのもあるよ」と知ってもらうことです。これは音楽であったり、食べ合わせである場合もあります。同じことをマシリトというバンドの印藤さんが言っており、わかりやすい言葉なので使っています。
今回のイベントで求められている制約条件にはこのようなものがあります。
一番むずかしいのが最初のもので、イベント全体の起承転結の「承」にあたる部分で、例えばいきなりアバンギャルドな楽曲ばかり流すと前後の出演者が作っている流れを止めてしまう可能性があります(他の出演者の選曲もチェックしていました)。おーでぃんぱらだいすというイベントなら、だいたいの出演者が逆張りしているので逆に流れが成立した可能性があります。
選ばなかったテーマとその理由
検討したが選ばなかったテーマなどを、今後アイデア元として使うときのために残しておきます。
ネガティビティや自己嫌悪と向き合う
【メモ】電波ソングでDJをやるときの案 - 今私は小さな魚だけれどの「美術館で会った人だろ」案を発展させようとした案。「ハッピーライフ(にかもきゅ)」「マイライフ(CY8ER)」のコンボ(一部のメロディーが引用されている)を決めようと思っていた。V系バンドのムックの初期のアルバムみたいな構成で、前半ひたすら暗くて後半に何らかの救いがある(もしくはひたすら落ちていく)展開にしたかった。
変わったところだと倉橋ヨエコの「ここにいる」も合うんじゃないかと思っていた。東方の映像付きのファン映像も流行っていたので、その点面白そうである。
あとSound Horizonの「タナトスの幻想は終わらない」とか、狂気や被害妄想の要素を入れていけば、他の出演者とは違った「電波」の表現ができるんじゃないかと思っていた。
これでいけなかった理由はこちら。
- OTAHENアンセムが他の出演者と被ってしまった
- 電波ソングっぽさを出せなかった
- 「OTAHENアンセム」はけっこう明るい曲なのでこの用途だと合わなかった。後半に入れると「アイドル文化」という形で救いが生まれるが、その答えで良いのかわからなかった。
- 中盤の「そろそろ違うジャンルを味わいたいな」と思っている時間帯じゃないとキツい。2人目だと流れを止めてしまう
アフターコロナと人類滅亡
「THE THUNDER -コロナウィルス撃退曲-」を主力にしたデッキ。今の時期、映像も含めて絶対に盛り上がると思う。
1ターン目に「THE THUNDER -コロナウィルス撃退曲-」を展開し、その後「ナウシカ・レクイエム」を発動する。その後人類の衰退や、ポストアポカリプスをテーマにした作品の楽曲を展開する流れを考えていたが、
- 怒られそう
- そもそもシリアスになって電波ソングさを出すのが難しい。劇伴やBGMのイベントならいけるかもしれない
- 一つ前の案と同様、2人目だと流れを止めてしまう
という理由で断念した。
ひきこもりスタイル
コロナウイルスでの引きこもり生活をテーマにし、「干物妹うまるちゃん」の楽曲や、Uの「I save your place」を主力にしたデッキ。
あと配信が開始されたらこれも流したかった。
採用しなかった理由
- 引きこもりの曲が少なかった。ただ、これがメインテーマじゃなくて、ポップな電波ソングのテーマで途中で何曲かつなげる際には使えそうだった(ただ時事ネタなのでもう機会はないかも…)
- 外出できた喜びをテーマにしたほうがよさそう
宇宙人と異文化交流
でんぱ組.incの「太陽系観察中生命体」がいい曲だったので。「知的生命体2号」などと組み合わせて。ちょっとアバンギャルドな雰囲気出せると思った。
採用しなかった理由
- 1回目のテーマと似ているので、そちらと違った感じが出せそうになかった
ファンタジーとゲーム
わーすたの「くらえ!必殺!!ねこパンチ★ ~私達、戦うにゃこたん【レベル5】~」を聞いて、森永まみさんの「まことにざんねんですがぼうけんのしょはきえてしまいました」とかと組み合わせて、RPGゲームのスタート→クリアまでをテーマにするのもありだと思っていた。あとななひら先輩の曲もいくつか使えそう。
採用しなかった理由
- 曲数が足りない
おっぱいと下ネタ
私は、電波ソングのイベントに出ている割に、意外と卑猥なテーマでDJをしたことが無かった気がします。あと「世界イク上2019 大会公式テーマソング」とか。
あと浦安鉄筋家族とかクレヨンしんちゃんの曲も小学生レベルで良い。
選ばなかった理由
- 小学生レベルの下ネタ(うんこちんちん)と、高校生以上の下ネタの共存が難しかった
電波ソングの「本流」の歴史や影響関係を描く
何かの資料ができつつある pic.twitter.com/B1zlqRCI9v
— 黒めだか (@takeshi0406) 2020年6月7日
こちらの記事で少し話しているのがそれです。
個人的には電波ソングは、音楽ジャンルとしては「ゲーム音楽のクリエイターがテクノポップやニューウェーブを作っていた」血統があって、そこに「I've SoundのSHORT CIRCUITの作品群によってJ-POPのパロディとして過度なポップさや合いの手(UNDER 17も位置づけとしてはここ?)」が取り込まれ、「MOSAIC.WAVやIOSYSが音を過激に盛って」確立したジャンルだと思っています。
選ばなかった理由
- ジャンルも統一感が無く、自然に繋がりそうになかった。例えば「JUDY AND MARYのコピーバンドをしていて歌声の参考にしていた」という理由で「RADIO(JUDY AND MARY)」→「さくらんぼキッス」の流れは考えていたが、それ以上が思いつかなかった。
- 全体を描こうとすると一筋縄ではいかなかった
- 結局この中の一部のテクノポップ的な側面と、渋谷系との関わりを切り出すことにした
電波ソング×渋谷系っぽい曲
これを採用しました。アキシブ系のアーティストや、電気グルーヴが作曲した曲などを入れています。
これまで他の方のDJでも、電波ソングのセットリストで「にこにこにゃんにゃん」を使いこなすのが難しいなと思っていたのですが、割と自然な流れで入れられたと思っています。
また、「ウルトラリラックス(石野卓球が作曲)→ウルトラesp(電波系キャラの先駆けの永倉えみるのキャラソンで、ウルトラリラックスのオマージュだと思われる)」という流れも入れたかったのですが、BPM帯が合わずに入れられませんでした。あと中田ヤスタカも。
あと「瞬間テレパシー電波」も入れたかった。2006年の同人作品で、古い同人作品は顧みられることが少ないのでぜひ知ってほしい。