今私は小さな魚だけれど

ちょっぴり非日常な音楽を紹介するブログです

意外性を最大化するDJの方法のメモ

DJをするとき多くの場合は「前の曲や近い曲を流そうとする」のですが、むしろ「これまでの展開と全体と整合性を取る」というのは単なる制約条件で、魅力を高めるには「意外性を最大化するのがいい」と感じるようになってきました。

このときもこんな感じのことを考えてたんですが、むしろ最大化して面白みがあるのは「裏切り」のほうなんじゃないかと。

というわけで、今の自分は(しっかり選曲するようなイベントでは)3曲ごとのブロックは意識せず**全部のつなぎで「期待通り」かつ「裏切り」と思わせることを目指しています。自分のDJは妙にロングミックス気味で、ブロックをしっかり決めるよりドロドロした感じが出て好みに合ってます。

最適化問題っぽく書くと、「これまでの展開と全体と整合性を取るのを制約条件として、意味が一番遠いものを選択する」って感じになると思います。

ただ、自分が思いつくようなことは絶対だれかもう考えてるやろって思ってChatGPTに聞いてみました。

chatgpt.com

物語の創作論から

ちゃんと理論としてまとまっているとしたら、物語の制作が一番近いと思って質問してみました。

物語創作でよく言われるのが、「意外性があるのに、必然にも感じられる展開が最良」という原則です。

  • 代表的な言い回しは「Surprising yet inevitable(意外だが必然)」。

  • 古典的にはアリストテレスの『詩学』で述べられる「ペリペテイア(展開の急転)」と「アナグノーリシス(認識の転換)」の関係などに通じます。

  • “今の物語の流れやキャラクターの性格からすると普通はこうなる”という予測を裏切りながらも、「でも考えてみるとその展開しかあり得ないよな」と読者が納得してしまう、という状態を目指す考え方です。

これは「制約(ストーリーの整合性やキャラクターの性格など)を守りつつ、もっとも予想外の方向を選ぶ」というお話にかなり近いと言えます。単に“遠い展開”にするだけではなく、「物語世界の必然性」を損なわないのが重要なポイントです。

へ〜、普通に勉強になる。

2. 「 defamiliarization(異化/驚異化)」または「オストラニエーニエ」

ロシアの文芸理論家ヴィクトル・シュクロフスキーが提唱した「オストラニエーニエ(остранение / 異化/驚異化)」の概念は、「当たり前だと思っていることを、あえてズラし、見慣れない角度から描くことで新鮮にする」手法を指します。

  • ストーリーの文脈というよりも文体や表現技法で語られることが多いですが、「読者の予測や慣れを崩す」という点では近い部分があります。

  • “よくある展開”を真逆から描く、あるいは別の視点を提示して「えっ、そんな風に見るんだ」という驚きを作る、という創作姿勢が通底しています。

これは後で調べてみよう。で、他にもこれらもDJで行き詰まったとき、特に事前にセットを作るときに役立ちそう。

DJ分野から

次に当然DJ分野から理系っぽい、最適化問題っぽい言い方はしてないものの、まあめちゃめちゃ言われていて、金言ばっか集まってきましたw

  • 「異なるジャンルを織り交ぜつつもフロアのムードを損ねない、予測不能な展開」(Mareena
  • 「ただひたすらヒット曲を連発するのではなく、緩急をつけてテンションを上げ下げし、感情に呼吸をさせるように構成する」ことが大事(Odymel
  • 例えば「おなじみのヒット曲も斬新なリミックスや別の曲とのマッシュアップで聴かせたり、突然ジャンルを大きく逸脱する展開を一瞬入れて聴衆を驚かせてから、また期待通りの流れに戻す」というような演出(Obieの指摘
  • DJコミュニティでは、選曲と選曲の間のつなぎ方次第で曲の印象が一変する(DJ DodgyStyleの持論
  • 「観客が初めて曲を聴く新鮮さを自分自身も味わいたい。だから曲も断片的にしか予習せず、本番で自分にもサプライズを残しておく」と述べています(Mixtress

具体的なテクニックとして以下のようなものが挙げられていました。

  • 急なジャンル転換・BPM変化で驚かせる: Digital DJ Tipsの創設者Phil Morse氏も「大胆にマルチジャンル・マルチテンポを行き来するセットの方が、単一ジャンル/BPMでずっと安全運転するより大抵の場合盛り上がる」と述べており、多少ミスがあっても大胆にやってみる価値があると助言しています(digitaldjtips.com
  • ビルドアップからあえてドロップを外す(フェイク・ドロップ):例えば、音楽制作の観点からiZotope社の記事は「ドロップ直前まで引っ張っておいて、肝心の一発目のベースをわずかに遅らせてみる」ことや、「思い切ってドロップの頭を一瞬無音にしてみる」ことを提案しています(izotope.com
  • 意表を突く選曲やマッシュアップ:ある記事では「昔の名曲を不意にドロップしてノスタルジーを喚起したり、逆に聴衆が知らない新曲を大胆に紹介して驚かせること」が名セットの特徴だと述べられています​(medium.com

最後の意外性のある選曲についての実例がこれで、エヴァンゲリオンとか殺し屋1(実写版)のBGMの使い方を思い出しましたw

実際、大物DJの中にはピークタイムに敢えて場違いなクラシック曲やロックの一節を挿入してみせたり、突然BPMを半分に落としてヒップホップの曲に切り替える(いわゆるハーフタイム/ダブルタイム切り替え)など、意外な選曲転換で聴衆の度肝を抜く例が知られています。これらは一歩間違えるとフロアの熱を冷ますリスクもありますが、成功すれば観客に鮮烈な印象を与える賭けとも言えます。

実際役に立つ指針としては、「意外性を出して盛り上がりを冷ましてしまうリスクも犯す勇気を持て!」とか「練習しろ!」くらいか。

哲学から

哲学者が理論っぽくしてくれる人がいるやろって思って聞いてみたら、意外に数は挙げられませんでした。その中から気になったものをピックアップ。

例えばドゥルーズが挙げられていて、彼の言ってることから「お客さんが盛り上がる差異」と「お客さんが冷めてしまう差異」みたいに考え始めると有意義かもしれない…?

ドゥルーズは『差異と反復』において、世界を動かす原動力を「反復(繰り返し)」と「差異(わずかなズレ)」の相互作用に見出しました。彼によれば、「全く同じものの繰り返し」では世界は停滞するため、「差異」の挿入が創造性や新たな意味を生むのです。

引用2つめ。

DJが既存のジャンルの枠組みを破壊し(脱領土化)、まったく異なる文脈の楽曲を組み合わせて新しい音楽の文脈を創造する(再領土化)ことは、この概念に合致しています。
フロアで聴いている人々は、この「領土」の変化をリアルタイムで体験し、その「裏切り」の中に新たな意味や感動を見出します。

先ほど出てきたオストラニエーニエ(остранение / 異化/驚異化)もまた出てきていて、こっちのほうが深堀りしやすそうです。「意外性をちゃんと新鮮に見せるためにはどうすればいいか?」みたいなほうがもう少し身近に感じます。

②『異化(オストラニエーニエ)』—ヴィクトル・シュクロフスキーの美学理論

ロシア形式主義の理論家シュクロフスキーが提唱した『異化(defamiliarization)』という概念は、音楽の予想外の展開にも哲学的・美学的に深く関係します。

シュクロフスキーによれば、芸術とは「人々が見慣れてしまった日常を、あえて見慣れない形で提示することで、世界を新鮮なものとして再認識させること」でした。

  • 音楽への適用例
    DJが突然異なるジャンルを繋げたり、予測できないビートやサンプルを挿入したりするのは、まさに「聴き慣れた音楽体験を新鮮にする」異化の手法そのものです。 リスナーはその瞬間、「当たり前」だった聴覚的経験が崩され、新鮮な感覚が呼び覚まされます。

更に「彼の指針によると新鮮に思って楽しんでもらうにはどんな指針を持てばいいことになりますか?」と聞いてみました。具体的には上で挙がったようなDJテクニックでしたが、VJの映像を踏まえた表現も挙げられていたのが面白いです。

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ある曲を流す際にちょっとしたストーリー(制作背景、歌詞の内容、制作国の文化的背景など)をMCやVJの映像で付け加えると、普段何気なく聴かれていた曲に新たな意味や色彩が加わります。 シュクロフスキー的には「当たり前の曲を当たり前に流さない」仕掛けであり、そこに“再発見の喜び”が生まれるのです。

まあ機会があったら調べてみよう。

まとめ

DJをするときに「似た曲を流そうとするというより、どうやって意外性を出すかのほうが重要だ」みたいな意見は結構ありふれてそうです。

ただ「これまでの展開と全体と整合性を取るのを制約条件として、意味が一番遠いものを選択する」っていうのはちょっと極端に言ってしまっていて、実際はプロのDJももっと上手くバランスを取ってやってそうなことも分かりました。