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今私は小さな魚だけれど

ちょっぴり非日常な音楽を紹介するブログです

【特集】オタクとサブカルの境界を越えるクロスオーバー・電波ソングの潮流…があるのかもしれない

ある程度年齢を経た方(20代後半以上?)は、いわゆるオタクとサブカルチャーは全く違う文化である、それどころか水と油のような相容れない関係だという認識があるかもしれません。

ところが若い世代では、どの文化がどちらのものといった意識が希薄であり、両方をクロスオーバーするような音楽も出てきている(気がする)というのが今回の記事のテーマです。もちろん安易な二元論はアカンですが、酒飲み話だと思って聞いてください。

それとなく清竜人さんをおすすめする記事でもあるので、気になったら聞いてみてね。

※追記

【雑記】昨日書いた記事がGunosyに取り上げてて2000PVいっててワロタwwww

何がオタクかサブカルか

こういう話を始めるとキリがないですが、「あなたは本当にオタクですか?/オタクとサブカル、ヤンキーと体育会系」という記事には次のように書かれています。スゲー大ざっぱですがまあ参考にはなるでしょう。

 ところで、京都の寺町商店街ではヴィレッジバンガードアニメイトが軒を連ねている。

 ここを通りがかった人のうち、ビレバンに入る人を「サブカル」、アニメイトに入る人を「オタク」と分類したい。内向的な趣味を持つ人々のうち、怪しげな輸入雑貨やお香の煙で部屋が満ちている人を「サブカル」とし、フィギュアやポスター、マンガやDVDで部屋が埋め尽くされている人を「オタク」のアーキタイプだとしよう。えらい学者さんがどう分類しているかは分からないけれど、とりあえずこの記事ではそういうことにする。一言でいえば、サブカルとは大槻ケンヂのことである。

オタクからするとサブカルというと、アニメを見ていたとしても、何となくおしゃれである程度流行っているやつしか見ない奴という印象を持っている方も少なくないでしょう。上澄みばっかり掬い取る憎い敵と思ってる人もいるかもしれません(?)。

元々パロディである電波ソングがパロディされる時代[要出典]

「何が電波ソングなのか」はファンの間でも論争が起こるテーマですが、大ざっぱに「曲のテーマが現実から離れている(多くはアニメやゲームの内容やキャラクターについて歌っている)」という点は共通している気がします。例えば『おれのなつやすみ2』主題歌の「夏休みとお兄ちゃん♪」は、こんな歌詞ですが、

固く大きな お兄ちゃんのおちんちん(ちゅぴちゅぱ~)

指で優しくこすってあげるおちんちん だいすき☆ミ

現実の兄妹をリアルに歌ってるわけではなく、お笑い的、ギャグ漫画的な感覚で歌われているはずです。

【ニコニコ動画】夏休みとお兄ちゃん

その「ギャグ漫画的」な表現の例として、元々電波ソングはパロディ的な楽曲も数多くあります。例えばI'veの初めて電波ソングといわれるKOTOKOの「恋愛CHU!」はハロ●ロの曲を参考にしているそうです。他にもアニメ/ゲームソングだという制約だとか、同人の東方アレンジで有名曲をパロったりだとか、ぱんださんようちえんがナゴムに憧れて作られた(?)とか。

「恋愛CHU!」OP

ちなみにハロ●ロがどうのって話は電撃オンラインのインタビュー記事が出典です。

高瀬氏「いやー、思い入れはありますよ。いろいろ苦労もしましたし。今でこそ、ファンの皆さまからご好評いただいているI'veの「ソレ系」ソングですが、『恋愛CHU!』が最初の電波系なんですよね。クライアントであるサガプラネッツさんから、『恋愛CHU!』のサンプルとしていただいたのが実はミニ●ニでして(笑)。中沢(※6)と一緒に聴いたんですが、こりゃ俺にはできないわ! って中沢に振っちゃったんです。それで、曲が上がってきて、KOTOKOちゃんが詞をつけてみたら……なんかチュッチュチュッチュとか間奏にセリフとか。呆然としました」

この点についてカオスラウンジの人がいい感じのこと言ってました。

だんだん「電波ソング」という言葉が広まっていくに従って、なんとなく「こういう曲が電波ソングだ」というイメージが固まって定型化され、逆にそれを楽曲の一要素として取り入れる楽曲が現れてきました。その中には今回取り上げるような、いわゆるサブカルチャー的なものもあります。

ある意味、パロディ的な性格が強かった電波ソングがパロディされるという変な状況だといえるでしょう。

例えばサブカルと関係ないところでは、Cherry Brownさんがななひらさんとコラボして、ヒップホップと電波ソングをゴチャ混ぜた「でぢたる☆でぃすこ」という曲を作っています。

Cherry Brown - でぢたる☆でぃすこ feat. ななひら 【edited】

でんぱ組.incの受容のされ方について

5人組だった時期はPCゲーム『トロピカルKISS』やOVABaby Princess 3Dぱらだいす0』などの萌え萌え~な楽曲を歌ってましたが、現在は「W.W.D」のような、彼女たち自身をテーマにした曲も歌っています。

歌詞の内容もシリアスで、曲の端々にピコピコな萌えソングっぽさは無いとはいえませんが、恋愛CHU!の「ちゅっちゅ~!ちゅっちゅ~!ちゅっちゅちゅ~!(イェ~~~~イ)」的な脳天気な電波ソングの雰囲気は(この曲については)ありません。電波ソングの一要素を取り出して換骨奪胎しています。

【生きる場所なんてどこにもなかった】でんぱ組.inc「W.W.D」Full ver.

アーバンギャルドと対バンライブしてたし、最近はむしろサブカルな人のほうに受け入れられている気がします。彼らもピコピコしてますが、サブカルの塊みたいなアーティストで、オタク文化な人にはウケが良くないかもしれません。

アーバンギャルド - 都会のアリス

ちなみにアーバンギャルドは「セックスはお好きですか」で始まるコール&レスポンスが有名ですが、もしオタクに同じことを聞いても「知るかバカ!そんなことよりオナニーだ!」と駄コラを投げつけられるのが関の山でしょう。

個人的には、ギターがかなりメタルっぽいのに、あのジャンル特有の自己主張の激しいギタープレイとかが少なく、物足りない気分になるのであまり好きじゃないです。

yd6XE.jpg

でんぱ組の話に戻って、彼女らは面白い受容のされ方をしていると思います。実は最近の「W.W.D」のような雰囲気は違和感を感じていますが、「でんぱれーどJAPAN」のような電波ソング+メロディックパンク(?)な曲に新しい可能性を感じます。

でんぱ組.inc「でんぱれーどJAPAN」Music Clip Short ver.

最近はしまじろうさんとコラボしたり、ショートアニメ『にゅるにゅる!!KAKUSENくん』の主題歌を歌ったり、お茶の間進出も徐々に果たしているようです。

彼女たちが新しい可能性にチャレンジするのを楽しみにしている一方、もう一度萌えアニメやPCゲームの曲で、ストレートな電波ソングを歌ってくれないかなと思う自分もいます。

上坂すみれのコラボがヤバすぎる

声優・上坂すみれさんはかなりの音楽ファンであることが知られており、彼女の音楽活動にはオタク、サブカル系を含み、いろいろとヤバいミュージシャンが集まっています。

例えばアニメ『げんしけん二代目』主題歌では、「げんし、女子は、たいようだった。」は作詞作曲は桃井はるこさん、演奏はなぜかカブキロックスが担当していて正直わけがわかりません。この曲の「ヲタもサブカルもどっちだっていいじゃない」という歌詞は、げんしけんの作中のセリフだそうですが、彼女自身を象徴する言葉でもあると思います。

げんし、女子は、たいようだった。/上坂すみれ

こちらのインタビュー記事(「クラスタ」とか「キャラ」とか使うのは苦手です。)では、彼女の音楽遍歴について書かれており、とてもおもしろいです。

まず「筋肉少女帯桃井はるこさんの他に」って尋ねられ方がもう変です。

───筋肉少女帯桃井はるこさんの他に、どんな音楽を聞かれてるんですか?

上坂:最近は幅広いですね。中学生の時にハマったのは、筋少の他に、電気(グルーヴ)とかYMOとか。戸川純さんは高校入ってからですね。あと中森明菜さんとかですね。各テクノ歌謡のアイドルさん達の曲って名曲が多いじゃないですか。特に高見知佳さんが好きです。あ、渡辺典子さんも好きですねー! 角川三人娘の一人で、80年代の映画も大好きなんです。

1stシングル「七つの海よりキミの海」は彼女自身の趣味をごちゃ混ぜにしたような楽曲です。ニューウェイヴが時折アニソンやメタルやロシア民謡に変化するような(?)曲。ナタリーでは次のように説明されていました

神前暁高田龍一が手がけるトラックは上坂自身も敬愛する戸川純のユニット、ゲルニカのようにめまぐるしくジャンルを変化させ、畑亜貴による歌詞は「今日も海はどんぶらこ 波チャプれ背びれパンパンパン」「むろみ~! やめて~!」と中毒性抜群。

上坂すみれ「七つの海よりキミの海」

今度ついに大槻ケンヂさん&特撮(バンド)のメンバーNARASAKIさんが制作した曲を歌うんですね。

かねてから筋肉少女帯と特撮を崇拝し、メディアでも幾度となく名前を挙げてきた上坂すみれ。彼女はこれまでも自身のラジオ番組「上坂すみれの乙女*ムジカ」や雑誌「別冊spoon.」にて大槻ケンヂとの対談を行っているが、今回ついに楽曲提供を受けるという夢が実現することになった。

NARASAKIさんといえば、BABYMETALの「ヘドバンギャー!!」を作曲したのも彼なんですね。あの曲は、いかにもステレオタイプな「ヘビメタ」な雰囲気だと思わせといて、その実最近のエクストリームメタルの要素も入れてる感じがすごいと思います。(あんまり電波ソング関係ない話になってきた)

BABYMETAL - ヘドバンギャー!![ Headbangeeeeerrrrr!!!!! ] (Full ver.)

上坂すみれさんとのコラボではどんな曲になるのか非常に楽しみです。

清竜人の『MUSIC』が(なぜか2年越しに)話題になる

シンガーソングライター清竜人(きよしりゅうじん)さんは、堀江由衣さんの「インモラリスト」を作った人だといえば分かる人も多いでしょう。(ちなみに『MUSIC』でセルフカバーも披露しています)

堀江由衣  インモラリスト 初披露ライブ

彼の2012年のアルバム『MUSIC』が色々とヤバいと最近話題になってました。Wikipediaには次のように説明されています。

過去三作とは一線を画すコンセプトアルバム。全収録曲に台詞パートを含み、定型的なポップスの曲構成をしばしば逸脱するミュージカル形式が取られている。1曲ごとに異なるアレンジャー、キャストを配しバラエティに富む内容だが、サウンド的には打ち込み中心のカラフルなポップスに統一されている。アレンジャー及び声優の人選は清竜人自身によるものである。

堀江由衣さんなど声優さんがアルバム全編セリフパートがあり、アレンジャーにMOSAIC.WAVa.k.a.dRESS(ave;new)など電波ソングファンにはお馴染みの方々がクレジットされています。

が、実際聞いてみましたが、電波ソングを消化しつくし、全くの別物に作り替えたような音楽でした。アニソンや電波ソングのキャッチーさがあるものの、ところどころリアルな台詞のやりとりが挿入されていてギョッとしていまします。

MOSAIC.WAVが編曲した「Fall♡In♡Loveに恋してるっ♪」も、すっごいキャッチーな曲で、(すごく違和感感じますが)男性の立場の萌え電波ソングという趣です。人によっては嫌な顔するかもしれませんが、すごく新鮮でした。(ヒャダインさんも自分のソロでこういうことがやりたかったのでは、という気がしないでもないです。)

一応ニコニコ動画に一曲目「CAN YOU SPEAK JAPANESE?」のライブ映像がありますが、このアルバムの異様さはほとんど分からないでしょう。

【ニコニコ動画】清 竜人 - 「CAN YOU SPEAK JAPANESE?」 (from EMI ROCKS 2012)

ポップと電波ソングその他もろもろを混ぜあわせたような奇妙な音楽が聞きてみたい人はぜひ手にとってみてください。

ちなみに堀江由衣さんのニューシングルを再び担当した他、でんぱ組.inc夢眠ねむさんのソロ楽曲「あのね…実はわたし、夢眠ねむなんだ…♡」も制作しています。

(まとめ)電波ソングの意味の変容と、多様性の減退と、新しい可能性

この記事では、電波ソングの新しい潮流、特に従来サブカルチャーと括られていた文化との合流について見てみました。従来あまり相性の良くなかった(と思われていた)文化を合流される、若い世代が現れてきています(って言うほど私も古参ではありませんが)。

ところで、「電波ソング」という言葉の意味が最近ものすごく狭くなったというか、だんだん変容してきている気がします。2000年代前半でもKOTOKOさんなど継続して活動してきた人の影響は残っているものの、かつて存在したようなわけのわからなさや共通点のなさが失われてしまった…のかもしれません。

日本ブレイク工業 社歌 長版

個人的には自主制作アニメ『拳闘巫女こぶしちゃん』とその主題歌「拳闘百番勝負」とかもっと顧みられるべきだと思うのですが。

【ニコニコ動画】拳闘巫女こぶしちゃん

特に『ぱんださんようちえん』は、ある年齢以上は意外に多くの人が知っているのに、ある年齢以下の人には全く伝わらない気がします。今ではダウンロード販売も行われているので買いましょう。

ぱんださんようちえん

電波ソングはこういうものである」というイメージが固まってきたおかげで、この記事で紹介したような、電波ソングを一要素として組み込んだ楽曲が生まれたのも事実です。しかし、もっとヘンテコでわけの分からない曲もあり、そういう音楽や文化も楽しいはず。

さらに希望を言えば、新しい流れがこういうところでもぶつかって、さらに素晴らしくヘンテコな音楽や文化が生まれて来てほしいです。というわけでいろいろ聞きましょう。

(だんだん自分で何言ってんかわかんなくなってきたのでこの辺でやめます)

最後にちょっとだけ、この記事ではオタクとサブカルの大ざっぱな二元論で書きましたが、それ以外にも(電波ソングでもソレ以外でも)素晴らしいものがたくさんあります。言葉にとらわれて視野が狭くならないように注意したいです。

例えば数々のアニメソングの作詞を手がけている畑亜貴さんがNHKみんなのうたに提供した「図書館ロケット」という曲。人によっては彼女の電波ソングに通じる感覚を得るでしょうが、これは別にオタク臭くもサブカル臭くもないでしょう。

図書館ロケット - 畑亜貴

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