今私は小さな魚だけれど

ちょっぴり非日常な音楽を紹介するブログです

電波ソングらしいDJのやり方

DJをやっていると、選曲のテーマをしっかり考える癖がつくと思います。いつも「この曲はあの曲と共通点は何だろう」と考えながら聞くようになるはずです。

たとえば、「DJ選曲術 何を考えながらDJは曲を選びそしてつないでいるのか? 沖野修也著 GROOVE Presents」という本には次のような話があります。

僕が、若いDJによく尋ねることがあります。「なぜ、あの曲の次にこの曲なの?」と。脈絡のない話というものは意味がわかりませんよね。それと同じです。悪い選曲は、全く意味が分かりません。本人にとっては、何か理由があって次の曲を選んでいるのでしょうが、それが伝わらないのです。もしくは、そもそもそんなことなど考えずに、適当に並べているだけかもしれない。例えば、1曲1曲が悪くなくても、その並べ方が悪いと、選曲の価値はゼロです。むしろ、音楽の良さを殺してしまうかもしれないのです。

この考え方は正しいと思うのですが、電波ソングコミックソングでDJをしようとするとき、このジャンルの良さである「意味がわからんけど楽しい感じ」や「なんか唐突で笑える」みたいなものと折り合いが悪いと感じることがあります。おそらくちゃんとした意味でDJや選曲に慣れるほど、なんか電波ソングっぽくなくなるはずです。

なんか「面白い冗談を言う方法」みたいな記事になるので気恥ずかしいんですが、誰かの役に立つかもしれないので共有します。

好きなものがあったらとりあえずねじ込む

電波ソングに詳しい先輩が来日したとき、「うまぴょい伝説のイントロのあとにおうまはみんな〜のCM曲を流して、うまぴょい伝説を流す」というムーブをしました。これは電波ソングらしい唐突な選曲だと思います。

後から聞いたら、「日本に来て夜TVを見てたら、ウマ娘のCMが流れてて耳に残った。ウマ娘は好きだけど、全体の中で入りそうなところがここしか無かった」ということを言ってました。

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例えば、CLAMPの作品を呼んでいると、東京に主要な建造物で守護結界が張られている(かっこいい世界観!)なのに、よくよく冷静に読むと「なんで中野サンプラザが東京の主要な要素に入ってるんだ…」って疑問に思うと思います。こういうとき「かっこいい世界観!」とか「なんかかわいいから!」っていう衝動を優先して世界観にねじ込むCLAMP先生の姿勢を学びましょう。

そもそもアニメやコミックの文化が、ある意味軽薄に、そういう他人とズレてる部分を楽しむスタンスを含んでいるはずだと思います。特に(自分たちより上の世代の)海外の日本アニメファンは、fansubでいろいろなアニメをチャンポンして見ているせいかそういうノリが強い気がしてて、私はこれはなんか有用な考えを含んでるんじゃないかと思ってます。

(哲学とか得意な人だったら、ここでバフチンのカーニバル論とかを使って気の利いたことを言える気がします)

歌詞の細かいところで繋げる

次は通常のDJのやり方と矛盾しづらい方法です。連歌か落語か忘れたんですが、その辺の本に書かれてた何かを真似した覚えがあるんですが、歌詞の細かいところで繋げて曲の意図とは別の意味を表現をすることがあります。

hearthis.at

手前味噌なんですが、途中のこのあたりのつなぎ方で特に歌詞で繋いでいます。更に、このイベントの趣旨に沿って、全体で「会社とは別にやりたいことを見つけたから(裸一貫で or 根性で or 生き残るために)がんばる!」みたいなノリにしてます。

ゆけむりモード
→ 全日本お風呂化計画: 「風呂」
→ アパッチ野球軍: 「(風呂だから)裸」、あと前の曲が野球の応援歌風なのから野球の曲へ
→ 根性戦隊ガッツマン: 「根性」
→ 大魔法峠: なんとなく…w

ただ、このやり方はけっこう面倒くさいし、他の楽曲の共通点よりおそらく難易度は高く、テーマに合うか運次第でもあります。繋ぎ方の手札を増やすためくらいで考えるべきかもしれません。

(また、地方創生☆チクワクティクス、ド田舎ちゃんねるあたりで「大阪を田舎扱いしてるように聞こえるんじゃないか」みたいな懸念はあったんですが、そこまで考えると身動き取れないのでやりませんでした。)

そういえば「DJ選曲術 何を考えながらDJは曲を選びそしてつないでいるのか? 沖野修也著 GROOVE Presents」の「意外性を取り入れる」って章が面白くて、このDJの時も「全然違う出自だけどバンジョー風の音が入ってるイベントテーマに沿ってそうな曲」みたいな地味な共通点の繋ぎをしてます。「似ている上に意外である」ことの難しさや重要さの話は本当に役に立ちます。

酒を飲んで楽しくなる

IOSYSのARMさんがなんかのイベントで、「ぱんださんようちえん(※名盤)を作った人は、なんか出演者に酒いっぱい飲ませて収録室に入れたそうだよ」みたいなこと言ってました。酔ってるときは気が大きくなって、電波ソングらしい唐突な選曲ができるようになります。

まとめ

にんぢん(@11yrs_old)さんが「自分たちはDJを漫才と勘違いしてる」みたいなことを言っていたのですが、これは正しくて「一番うまく間違ったやつが面白い」みたいな価値観はあると思います。

これはけっこう普遍的な考え方かもしれなくて、「コミックソングノベルティソングが新しい音楽を取り込んできた」みたいな歴史とも共通点があるような気がしてます。そういえば「太夫才蔵伝―漫才をつらぬくもの (平凡社ライブラリー)」という本で「漫才的なユーモアが外来文化を取り込む際の緩衝材として役立ってたんじゃないか」みたいな主張もあったので、本当に漫才と共通点が見いだせるかもしれませんw

多分「知らない国の文化を知る」とか、もっと身近に「言ってることがよく分からない他者と付き合う」みたいな場面で、「意味がわからんけど楽しい感じ」みたいなのは役に立つこともあるんじゃないかと思います。